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宗教の衰退 | 2022年04月08日

宗教人口1億8千万人。
日本人の信仰心がうすいのはなぜか

わずか16%

あなたは自分が「信仰心があつい」人だと思いますか?

もしこの質問に「はい」と答えたなら、あなたは日本人の中で少数派と言えるでしょう。

日本人を対象としたある調査で、自分は「信仰心があつい」と答えた人は16%、「信仰心がうすい、または無神論者」と答えた人が62%だったそうです。

「信仰心があつい」と答えた人が16%もいたことに驚かれましたか?

では次のアンケートに皆さんはどのように回答されますか。
※実際に集計していますのよろしければ回答してみてください

どの宗教を信奉していますか。[複数回答可]
回答する

日本人の宗教人口は総人口より多い

上のアンケートを日本全国で実施すると、最も多い回答はおそらく「宗教を持っていない」か、「神道系」と「仏教系」を含む複数回答が最多になることでしょう。

これは文化庁の宗教統計にも現れており、日本人の宗教人口は統計によると1億8000万人、総人口の1.5倍にも及びます。

平成29年信者数
出典:文化庁 宗教年鑑

上記の数字は宗教団体側からの数字のため実態を反映しているとは言えませんが、この数字には法人格を持たない宗教団体の信者数は含まれていないことを加味し、成人人口に絞れば、統計上は成人一人あたり二つ以上の宗教を持っていると言っても過言ではないでしょう。

困った時の神頼み

今度は別の角度から。

宗教団体ではなく信者側、国民に対して行われたある調査では、「神道を信じている」と答えた人は、成人人口のわずか3%の200万人だったそうです。

団体側の数字からすると神道信者は8600万人を超えていますが、一方で信者側から統計をとると、その数ははるかに少ないということです。

このように、統計のとり方によって全く数字が異なるわけですが、きっと皆さんはこの調査結果に合点がいくのではないでしょうか。

これは神道に限ったことではありませんが、「 良く言えば 他の宗教に寛容」であり、「 悪く言えば 宗教的な信条をほとんど持っていない」人は少なくありません。

クリスマスを祝った数日後に初詣、家には神棚と仏壇、子供は十字架のアクセサリー。

七五三に宮参り、厄払い、手相占い、合格祈願。一見宗教心に富む民族にも見えますが「困った時の神頼み」という言葉が日本人の宗教観をよく現わしています。

日本人の宗教心が失われた時

では日本人の宗教心はいつから「うすく」なったのでしょうか。

第二次世界大戦の敗戦により天皇崇拝と国家神道の基盤が崩れたことが理由としてあげられるでしょう。

1868年に王政復古が行なわれ当時の憲法で、天皇が神道の最高神であり、太陽の女神である天照大神の直系の子孫とされました。

政権分離がすすんでいなかった日本は、国家として、天皇を「神」として崇拝していました。国家宗教だったため基本的に一般の日本人には宗教の選択がありませんでした。

第二次世界大戦中も「何も問わずに,神慮に服従せよ」という本居宣長の教えが浸透しており、天皇が「神風」によって勝利をもたらすと信じていたのです。

敗戦により天皇は神ではなくなり、国家神道の根幹が崩れ落ちました。

「日本宗教事典」には「敗戦の事実から生じた神義論的な疑問に対して,宗教的に高度で適切な説明が神社界から何ら行なわれなかったために,いわゆる「神も仏もあるものか」という宗教的に未熟な反発だけが一般の風潮となった」と説明されています。

何も考えずに信じるように教えられてきた「神」が、実は神ではく人間だったという事実、そして敗戦の傷は日本人の心から宗教心を失わせ、残されたのは神道の「柔軟性」と「儀式宗教」でした。

宗教心はなくても道徳心の高い民族か

たとえ宗教的な信条を持っていなくても、日本は治安が良く、道徳心も高い民族として評価されることも少なくありません。

スポーツ会場でゴミ拾いをしたり、落とした財布が帰ってきたり、電車の車内で寝ていられるほど治安がが良かったり、褒められるべき「世界の非常識」がたくさんみられます。

これには儒教の教えが関係しているとも言われていますが、島国であることや学校での道徳教育、貧富の格差が少ないことや、警察の検挙率の高さなど様々な要素が関係しているでしょう。

たしかに見方によっては道徳心の高い民族と言えるかもしれません。

しかしながら、時の流れとともに道徳心は徐々に、しかし確実に低下してきており、様々な社会問題となってそれが現れています。

宗教の本当の役割

ここで宗教の役割について考えてみましょう。

文化庁のある資料に挙げられている次の理念は役割の一つを説明しています。

宗教法人法の基本的理念
… 宗教は国民の道徳基盤をささえるものです。…

「宗教法人運営のガイドブック」文化庁

「国民の道徳基盤を支える。」これは宗教の重要な役割の一つと言えるでしょう。

実際、社会が抱える深刻な問題の多くは、新たな法律を作れば解決するものではなく、人間の内面の部分、道徳や倫理が関係しています。

人々の道徳基盤を支え、進むべき道を示す事のできる宗教が必要とされています。

そしてそれは戦中の天皇崇拝のような盲目的な信仰ではなく、論理的に考え、知的ものでなければ、その役割を果たすことはできないでしょう。

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