スイスは長らくキリスト教文化圏に属してきましたが、近年、その宗教的風景には大きな変化が見られます。連邦統計局(FSO)の最新データ(2025年発表)をもとに、宗教的所属や信仰、宗教行事への参加状況の変遷を見ていきます。
1980年から2023年にかけて、スイスにおける主要な宗教的所属は大きく変化しました。以下の表は、カトリック、プロテスタント改革派、その他の宗教、そして無宗教の割合の推移を示しています。
出典: FSO – Federal Population Census (1980, 2000), Structural Survey (2023), Language, religion and culture survey (2024)
| 所属 | 1980年 | 2000年 | 2023年 |
|---|---|---|---|
| カトリック | 46% | 39% | 31% |
| プロテスタント改革派 | 45% | 28% | 19% |
| その他の宗教的所属 | 5% | 13% | 14% |
| 無宗教 | 4% | 20% | 36% |
このデータから明らかなのは、伝統的なキリスト教宗派(カトリックおよびプロテスタント改革派)の割合が大きく減少している一方で、無宗教を自認する人々が急増している点です。1980年にはわずか4%だった無宗教層が、2023年には36%にまで拡大しています。
宗教的所属の変化に加え、実際の宗教的実践にも変化が見られます。過去12ヶ月間における宗教的行事への参加頻度を見てみましょう。
出典: FSO – Language, religion and culture survey (2024)
| 頻度 | 割合 |
|---|---|
| 少なくとも週に一度 | 8% |
| 少なくとも月に一度 | 10% |
| 年に1回〜11回 | 33% |
| 一度もない(Never) | 49% |
約半数の人々が宗教的行事に一度も参加していないと回答しており、宗教的所属があっても、実際の関与は限定的であることがうかがえます。
祈りの頻度に関するデータも、宗教的実践の個人化・多様化を示しています。
| 頻度 | 割合 |
|---|---|
| 毎日またはほぼ毎日 | 20% |
| 少なくとも月に一度 | 19% |
| 年に1回〜11回 | 13% |
| 一度もない(Never) | 47% |
出典: FSO – Language, religion and culture survey (2024)
祈りを日常的に行う人は2割にとどまり、約半数はまったく祈らないと回答しています。宗教的実践が生活の中で占める位置が相対的に小さくなっていることがわかります。
信仰の対象に関する調査では、以下のような結果が得られています。
| 信仰対象 | 割合 |
|---|---|
| 一神教の神 | 38% |
| ある種の超越的な力 | 21% |
| 神または複数の神の存在が不明 | 20% |
| 無神論(Atheistic) | 19% |
| 複数の神 | 2% |
出典: FSO – Language, religion and culture survey (2024)
一神教の神を信じる人が最も多いものの、「超越的な力」や「存在が不明」といった非伝統的な信仰形態も一定の割合を占めています。これは、宗教的枠組みにとらわれないスピリチュアリティの広がりを示唆していると考えられます。
これらのデータから、スイス社会における宗教の位置づけが大きく変化していることが読み取れます。宗教的所属の減少、実践頻度の低下、信仰の多様化は、宗教がかつてのような社会的基盤ではなく、個人の価値観やライフスタイルに応じて再定義されつつあることを示しています。