国際比較 | 2025年10月19日

スイスで進む「宗教離れ」

スイスは長らくキリスト教文化圏に属してきましたが、近年、その宗教的風景には大きな変化が見られます。連邦統計局(FSO)の最新データ(2025年発表)をもとに、宗教的所属や信仰、宗教行事への参加状況の変遷を見ていきます。

宗教的所属の推移:カトリック・プロテスタントの減少と無宗教層の増加

1980年から2023年にかけて、スイスにおける主要な宗教的所属は大きく変化しました。以下の表は、カトリック、プロテスタント改革派、その他の宗教、そして無宗教の割合の推移を示しています。

出典: FSO – Federal Population Census (1980, 2000), Structural Survey (2023), Language, religion and culture survey (2024)

所属1980年2000年2023年
カトリック46%39%31%
プロテスタント改革派45%28%19%
その他の宗教的所属5%13%14%
無宗教4%20%36%

このデータから明らかなのは、伝統的なキリスト教宗派(カトリックおよびプロテスタント改革派)の割合が大きく減少している一方で、無宗教を自認する人々が急増している点です。1980年にはわずか4%だった無宗教層が、2023年には36%にまで拡大しています。

宗教的実践の実態:形式的な関与の減少

宗教的所属の変化に加え、実際の宗教的実践にも変化が見られます。過去12ヶ月間における宗教的行事への参加頻度を見てみましょう。

出典: FSO – Language, religion and culture survey (2024)

頻度割合
少なくとも週に一度8%
少なくとも月に一度10%
年に1回〜11回33%
一度もない(Never)49%

約半数の人々が宗教的行事に一度も参加していないと回答しており、宗教的所属があっても、実際の関与は限定的であることがうかがえます。

祈りの頻度:個人信仰の多様化

祈りの頻度に関するデータも、宗教的実践の個人化・多様化を示しています。

頻度割合
毎日またはほぼ毎日20%
少なくとも月に一度19%
年に1回〜11回13%
一度もない(Never)47%

出典: FSO – Language, religion and culture survey (2024)

祈りを日常的に行う人は2割にとどまり、約半数はまったく祈らないと回答しています。宗教的実践が生活の中で占める位置が相対的に小さくなっていることがわかります。

信仰の対象:伝統宗教から超越的概念へ

信仰の対象に関する調査では、以下のような結果が得られています。

信仰対象割合
一神教の神38%
ある種の超越的な力21%
神または複数の神の存在が不明20%
無神論(Atheistic)19%
複数の神2%

出典: FSO – Language, religion and culture survey (2024)

一神教の神を信じる人が最も多いものの、「超越的な力」や「存在が不明」といった非伝統的な信仰形態も一定の割合を占めています。これは、宗教的枠組みにとらわれないスピリチュアリティの広がりを示唆していると考えられます。

宗教の個人化と社会的役割の再定義

これらのデータから、スイス社会における宗教の位置づけが大きく変化していることが読み取れます。宗教的所属の減少、実践頻度の低下、信仰の多様化は、宗教がかつてのような社会的基盤ではなく、個人の価値観やライフスタイルに応じて再定義されつつあることを示しています。

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